メニュー

世界高血圧デー

[2022.05.19]

 

[2022.05.17]

本日は世界高血圧デーです。 高血圧のことを深く知るための日です。

 

世界高血圧連盟が5月17日に記念日制定した国際デーのひとつです。

そして日本高血圧学会と日本高血圧協会は、第30回日本高血圧学会総会において、毎年5月17日を「高血圧の日」と制定することを宣言し、日本記念日協会により認定登録されました。

 

よく外来で高血圧に関することで聞かれることをまとめておきました。

 

高血圧で治療中の方の参考になれば幸いです。

 

 

 

  1. 血圧の薬を一度飲みはじめると、ずっと飲み続けなければいけないのでしょうか?
  2. ずっと飲み続ける人もいればそうでない人もいます。

高血圧の原因は、遺伝的要因や日常生活の内容(食塩過多な食事メニュー、運動不足、ストレス、喫煙),など以外にもサプリメントなどの健康補助食品、漢方薬や鎮痛剤の副作用で高血圧を来すこともあり原因はさまざまです。

治療が始まることで、高血圧につながる原因を改善することができれば、血圧を正常範囲に近づけることは可能です。しかし、高血圧には症状がなく、指摘されたときには、すでに高血圧となってからかなりの時間が経過していることがほとんどです。高血圧による動脈硬化が知らない間に進行している状況となります。

この高い圧が動脈に負担をかけて、さらにさらに動脈硬化が進行します。一度、動脈硬化が進行した状況(弾力性を失った動脈)は、元には戻りません。自動車の部品とは違い人間に体は悪くなった部分を交換などはできません。このように元に戻らなくなった動脈硬化により血管の弾力性がなくなってしまうと、持続した高血圧となってしまいます。

以上の高血圧の病態と、その病態が進行するメカニズムにより、一度内服を始めたら、ずっと薬を飲み続けなければならないかたも少なくありません。

しかし、何らかの誘因がきっかけで高血圧を呈している場合、例えば、高塩分食、喫煙、飲酒、薬剤、サプリメントなどの健康補助食品、原発性アルドステロン症などの2次性高血圧など、その誘因の除去などにより高血圧が改善することもあります。

血圧が高い→すぐに一生薬を飲まないといけないと短絡的に考えることなく、一度きちんと内科医の診察を受けることが賢明です。

高血圧を指摘された際は、放っておかずに早めに受診し、気を付けつけるべき生活習慣の改善点などを主治医の先生と相談することが、その後の高血圧発症予防として、大切になります。

 

  1. 血圧が低い日(100以下など)は薬を飲まなくてもいいのでしょうか?
  2. 測定された血圧が比較的低い場合に、自己判断で内服を中止することは危険ですのでおやめください。

血圧は、1日のうちに大きく変動します。起床時や食後、運動や感情の起伏によっても変化します。特に高齢者は動脈硬化が若年者と比較して進行しているため、血管の弾力性がなくなり、血圧の変動が大きくなる傾向にあります。

起き上がり動作や、起立時、食後も血圧が低くなる傾向があります。したがって、いつ測定した血圧が「低い」状態であるかの把握と、血圧が「低い」状態になった原因について検討したうえで、内服薬の調整が必要になります。

主治医の先生との詳細な相談が大切です.(日本老年医学会. 高齢者高血圧診療ガイドライン2017. 日老医誌 54:236-237, 2017. doi: 10.3143/geriatrics.54.G2)

血圧が低い日は、まずは低血圧による症状(めまい、ふらつき、嘔気、失神など)がないかを確認し、症状がある場合は内服を控えて横になり、早めに主治医の先生にご相談下さい。症状がない際にも、自己判断で内服中止を決めるのではなく、今までの家庭血圧の経過や、その時の状況などを主治医の先生と相談されたうえで、必要に応じて用量の調整や内服内容の検討を行うことが安全です。

決して、自己判断で内服を中止することは、お控えください。

 

  1. どうして家庭でも血圧を測定する必要があるのでしょうか?
  2. 血圧は、1日を通して常に変動しています。

日常生活のなかには、血圧に変動をきたす要因がいくつもあります。特に運動や緊張、食事や睡眠などによっても血圧は変動します。また、病院を受診した際に、緊張に伴い血圧が上昇する「白衣高血圧」という病名もあります。

したがって、1日を通して血圧の変動がどうであるかを把握し、常に高い状態であるのか、特定の時間帯だけ高くなっているのか、または家庭にいる時の方が高くなっており、受診時は正常に近くなっているのか、など、さまざまな状態を把握することが大切です。このためにも、家庭での血圧測定が推奨されています。

 

また、家庭で測定される血圧値は診察室で測定する血圧の値よりも、高血圧により将来生じうる疾患(脳卒中、心疾患など)の予測因子としても大変重要なものになります 。(J Hypertens. 22(6):1099-1104, 2004. )

ご自身の血圧を毎日測定し、高血圧気味になっていないか、または降圧薬を内服されている方は、血圧が過度に低下していないかなど、普段から血圧に対する意識を持つことも、健康管理の一つとしてとても大切な習慣となります。

 

  1. 家庭血圧を測定する時間帯や回数は、どれくらいがいいですか?
  2. 家庭血圧の測定は、一般的に、朝と晩の2回に行うことが推奨されています。

 

Q. 家庭血圧計はどんなものがいいですか?

  1. 上腕で測定するタイプのものをおすすめします。

家庭用の血圧計は、昨今さまざまなタイプが市販されています。それぞれに特徴があるので、説明いたします。

主に、指先で測定するもの(日本国内での販売はありません)、手首で測定するもの、上腕(肘の上あたり、病院で測定される位置)で測定するものがあります。

国内での販売はありませんが、指先で測定する機種は、正確性に劣ります。手首で測定する血圧計は操作自体が手軽で、小型であるため測定は比較的容易になります。しかし、手首の解剖学的な特性から、血圧を測定するための動脈の圧迫が困難になる場合があり、その点では不正確な値となることがあります。J Hypertens. 20:629-638, 2002

現状では、家庭血圧の測定は、上腕で測定するタイプが主流となっており、精度自体も、日本の製造会社の装置であれば大きな問題はありません。血圧測定計の精度検定成績については、日本高血圧学会のウェブサイトに記載されています。https://www.jpnsh.jp/com_ac_wg1.html

 

  1. 高血圧は遺伝するのでしょうか?
  2. 多少の遺伝要素はあります。

家族や、血のつながった方に高血圧患者さんがいる場合、ご自身も高血圧となる可能性は、遺伝因子の無い高血圧患者さんと比較して、3.5倍程度高くなると言われています 。( Br J Clin Pharmacol. 42(1):21-27, 1996.)

さらに、原因となる遺伝子のなかには、食塩感受性関連遺伝子といい、日常生活で摂取する食塩がきっかけとなり、高血圧を生じさせる遺伝子も報告されています。特に、日本人には、この遺伝子が関与する割合が高いとも報告されております。Hypertens Res. 26(7):521-525, 2003.

日本の食生活は諸外国と比較して塩分が多い傾向にあります。日々の生活のなかで減塩が大切ということですね。

 

  1. 白衣高血圧とは何でしょうか?
  2. 白衣高血圧は、家庭などで測定する血圧は高血圧の基準を満たさない値(収縮期血圧が135mmHg未満、かつ拡張期血圧が85mmHg未満)であるにも関わらず、診察室で測定すると高血圧の基準(収縮期血圧140mmHg以上かつ、または拡張期血圧90mmHg以上)を満たす状態のことを言います。

一見、白衣高血圧は、診察室で測定する血圧が高くなり、いわゆる緊張で血圧が高くなるだけ、と思われがちですが、そういうわけではありません。

降圧薬を処方されていない方のなかで、白衣高血圧の状態を示す患者さんは、健常者よりも脳血管疾患を患うリスクが高くなると言われています。

また、白衣高血圧の患者さんは、その後に白衣を着た医師の前以外でも血圧が高くなり、持続的な高血圧の病態となるリスクが高いとの報告もあります。家庭血圧の計測を日々行っていただき、高血圧となっていないかを注意深く観察して頂くことが必要になります10, 11, 12-14) 。

 

  1. 血圧は季節で変化するでしょうか?
  2. はい、冬の方が血圧は高い傾向にあります。

血圧は、血管内を流れる血液が、スムーズに通る場合は低く、過度に細くなっている場合や、太さが一定でない場合は高めになります。

特に冬場は、外気温が寒くなり、手足の末端が寒くかじかむ感覚があると思います。寒い場合には、人間の手足末端の血管は、体温保持しようとして収縮します。それと共に、血管の内腔も細くなることで、血液が流れにくくなり血圧が高くなります。

夏季の血圧に比較して、冬季の血圧が収縮期血圧 6.9 mmHg、拡張期血圧 2.9 mmHg高くなったという研究結果があります Am Heart J. 113(6):1489-1494, 1987。

特に、動脈硬化が進行した高血圧患者さんの場合、血圧の変動が大きくなる傾向がありますので、日々の家庭血圧測定により、その変動を知っておくことで、血圧の季節変動に対応した降圧薬の用量を検討する場合もあります 。J Am Heart Assoc. 4:7(10):e008509, 2018

また、冬場は血圧が比較的高くなる季節となる為、脳卒中や心疾患が生じやすい季節でもあります。1年を通したご自身の血圧の変動を把握するためにも、家庭血圧測定をお勧めします。

 

  1. 高血圧の薬とグレープフルーツジュースは、一緒に飲んではいけないのですか?

A.薬によります。

高血圧の薬(降圧薬)にはさまざまな種類があります。これらの薬は全て体内で分解され、最終的には体外に排泄されます。特に、高血圧の方に処方される主な薬にカルシウム拮抗薬と呼ばれる降圧薬があります。

これは、血管の細胞にあるカルシウムイオンチャネルという部位に対して作用し、細胞内へのカルシウムイオンが流入することを抑制し、血管収縮が抑制され、結果的に血管が拡張して血圧が低下します。

一部のカルシウム拮抗薬は、体内で分解される際に、グレープフルーツジュースを一緒に摂取していると分解が遅れて、降圧効果が強くなることがあります。一部のカルシウム拮抗薬と一緒にグレープフルーツジュースを飲むのは、思わぬ低血圧を起こさないためにもお控えください。

ちなみに当院で院内処方を行うこと事の多いカルシウム拮抗薬はアムロジピンという薬剤なのですがこちらはグレープフルーツジュースと一緒に服用した際に薬物の血中濃度の変化はAUC Cmax Tmaxすべて有意差無し(Br J Clin Pharmacol . 2000 Nov;50(5):455-63)ということになっています。

半面アゼルニジピンというカルシウム拮抗薬はグレープフルーツジュースと一緒に服用した際に薬物の血中濃度の変化はAUC3.3倍 Cmax2.5倍 Tmax1.8倍と大きく変化(J Clin Pharmacol Ther 2006; 37 ( 3 ) : 127-33)するので、カルシウム拮抗薬の種類によって大きく違うという事になります。

よってすべての血圧の薬がグレープフルーツジュースと相性が悪いわけでは無いというのが質問の回答になります。

 

  1. 症状がなければ血圧の治療をしなくても良いでしょうか?
  2. 症状がなくても、血圧が高い、高血圧であると診断された際には、積極的に治療を行うことをお勧めします。

高血圧は脳卒中(脳梗塞や脳出血など)、心疾患(心筋梗塞や狭心症など)の最大の発症危険因子です。また、高血圧は症状がほとんどありません。しかし、血圧が高くなることで、血管への負担が増加し、それが動脈硬化の進行につながります。

動脈硬化に発展してしまうと、その動脈は元の健康な弾力のある動脈には二度と戻りません。この結果、血管の弾力性が失われ、血液を各臓器へ運ぶ血管の内部(内腔)が狭くなり、十分な血液が各臓器へ届かなくなり、脳卒中や心疾患などさまざまな疾患が生じ、この時点で初めて高血圧に関連する症状が生じます。血圧が高くなればなるほど、合併症を発症するリスクが高くなります19-23) 。

さらに、高血圧の他に、喫煙や糖尿病、脂質代謝異常症などが合併していると、リスクはもっと高くなることが報告されています。上述したように、高血圧は症状に気づきにくいために、病気が少しずつ進行していくことになります。一度発症してしまうと、日常生活に不自由が生じてしまい、生活の質(Quality Of Life: QOL)が著しく低下することにつながります。

実際に、高血圧の患者さんが、治療によって収縮期血圧を10mmHgまたは拡張期血圧を5mmHg低下することに成功すると、脳卒中は30-40%、心筋梗塞や狭心症の発生は約20%減少することが明らかになっています。以上のように、症状がない場合でも、高血圧の状態を治療することは、脳卒中や心疾患の発症や進展、再発による死亡やQOLの低下を予防する目的として大変重要になります。

 

  1. 降圧薬の錠剤数が増えてきたので、錠剤数を減らしたいのですが。
  2. 現在内服されている処方内容を合剤へ変更ができる場合があるので、主治医の先生に相談してみてください。

血圧を治療中の方は、1剤だけで治療されている方や、何剤かの降圧薬を内服されて日々の血圧コントロールをされている方もいらっしゃいます。

錠剤数が増えることで、内服に対する負担が増えて、毎日きちんと内服できないことや、飲み忘れが生じる確率が増加し、治療がうまく進まないことにつながります。

もし合剤への変更が可能であれば、提案しますので、服薬数が多くて困っている際にはご相談ください。

 

  1. 家族も高血圧の薬を飲んでいるので、分けてもらい飲んでもいいでしょうか?
  2. 絶対にやめていただきたいです。

高血圧は、患者さん個々人により、高血圧のタイプや程度が異なります。それに合わせた作用機序や薬効を選択して処方がされているので、ご家族間であっても、薬を分けてもらい内服することは大変危険です。

自身の内服されている降圧薬が、どのような作用機序でどのような効き目、副作用があるかも知っておくと良いでしょう。

 

  1. 降圧薬を飲んでいるのに、朝に測る血圧が高いのは、なぜでしょうか。
  2. 朝の血圧は薬の効果が薄れていることが多いため、高めにでることがあります。

また就寝前の飲酒が翌朝の血圧上昇の原因となることもあります。

降圧薬は、内服してからしばらくして効果が表れてきます。多くの降圧薬の内服方法は、朝食後を含め、1日1回から3回までとなっています。

効果が表れてから体内で分解・代謝されるまでの時間により、1日の内服回数が定められています。したがって、1日1回内服するタイプの降圧薬は、飲み始めてから効果があらわれ、日中の血圧を下げて正常血圧に近づけます。そして、徐々に体内で分解・代謝されていき、翌日の内服前には、ほぼ効果が消失する程度に代謝・排泄されていきます。

よって、朝の血圧は、もともとのご自身の高血圧の状態の値に近くなり、測定値が高めになることがあります。

また就寝前に飲酒をする習慣のある方は就寝中にアルコールが分解されてアセトアルデヒドという人体にとって血圧をあげる物質が生成され翌朝の血圧をあげる可能性が指摘されております。飲酒のすべてがダメではありませんが、適切な管理のため飲酒が翌朝の血圧を上げる要素があるということは知っておいても良いのかもしれせん。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME